誰でもわかる「太陽電池モジュールのはなし」

Photo: Takanori Ota

太陽電池モジュールは、太陽光発電システムの“要”となり、発電量を左右する重要な存在です。そもそもなぜ発電するの? 出力、変換効率って何? どれくらいのサイズ感? など、知っておきたいこともたくさんあるはず。今回は、そのしくみや特性についてまとめました。

太陽電池モジュールって何?

「太陽電池モジュール」とは、太陽からの光エネルギーを電気に変換する「太陽電池セル」をつなげた集合体です。太陽電池は、p型とn型と呼ばれる異なる2種類の半導体を重ね合わせてできたもので、1個のセルの大きさとしては16cm×8㎝角程度。光があたると、半導体内の電子が接合部を通じて移動することで電気が発生するという“光起電力効果”を利用しており、1958年、人工衛星に搭載されたことで世界初の実用化を迎えました。

「太陽電池セル」を格子状につなぎ、ガラスや樹脂で補強したパネル状のものが「太陽電池モジュール」

ここで、太陽電池モジュールを比較する際、よく目にする用語をご紹介しておきましょう。

●モジュール公称最大出力
太陽光発電は、光の強さや太陽電池セルの温度等に影響を受けて、その発電量が変わります。モジュールの性能を示す数値のひとつ「出力」とは、光がモジュールにあたった瞬間に発生する電力量のこと。そして、JIS規格に基づいた一定の条件下における、モジュール1枚あたりの発電能力を示した値を「公称最大出力」といいます。単位はW(ワット)。

●モジュール変換効率
もうひとつ、モジュールの性能を示す数値に「変換効率」もあります。これは、光エネルギーを電気に変える“割合”を示し、モジュール1㎡あたりの変換効率として、次の計算式で導き出されます。単位は%。
「モジュール変換効率=(モジュール公称最大出力(W)×100)÷(モジュール面積(㎡)×1000W/㎡)」
同じ大きさのモジュールで比較したとき、モジュール変換効率が高いほど発電量は大きくなります。つまり、限られた設置スペースで効果的なシステムを検討する際、重要なポイントとなる値なのです。

●モジュール最大動作電流
公称最大出力時の動作電流のこと。近年、モジュールの変換効率の向上や、セルサイズの大型化に伴い、動作電流の大きなモジュールが出てきました。動作電流が増えることで出力も上がるのですが、大電流を変換できるパワーコンディショナを選ばないと、太陽光発電した電力が充分に変換されません。単位はA(アンペア)。

モジュールの種類と特性など、徹底解説!

<シリコン系の主なモジュール>
モジュールに使用する半導体は、シリコン系が主流となります。そのなかでも材質及び形状において代表的な3つについて比較してみます。

●結晶系(単結晶)
規則正しくシリコン原子が並ぶ「単結晶」は、木材でいえば“一枚板”のイメージです。電子の流れがスムースで、現在ある太陽電池の中で最も変換効率が高いのが特徴。耐久性にも優れています。市販品のモジュール変換効率は15~20%程度。

●結晶系(多結晶)
一方「多結晶」は、単結晶を作る過程で出た破片を再利用し、複数のシリコンをブレンドしてつくられたもの。いわば“合板”のようなイメージです。単結晶タイプと比較すると効率は落ちますが、製造過程でのムダがなく安価、しかも製造自体も容易。市販品のモジュール変換効率は14~16%程度。

●薄膜系(アモルファス)
低コスト化を目指し、シリコンの使用量を削減できる太陽電池として開発された比較的新しい技術。量産可能ですが、結晶系と比較すると変換効率が落ちます(ただし、高温でも変換効率はあまり落ちないというメリットもあります)。薄膜の形状を活かしたフレキシブルな太陽電池モジュール開発に向け、期待が集まっています。

<モジュールの大きさ>
太陽電池モジュールの大きさについては決まった規格がないため、国内外の各メーカーでさまざまな形の製品が出ています。そこで、住宅用として一般に販売されている主要メーカーのモジュール(単結晶シリコン)のサイズ感について、平均を割り出してみました(2021年12月末現在)。

●モジュール1枚あたりの平均値
公称最大出力:325W(最大375W)
モジュール変換効率:20.0%(最大20.6%)
サイズ:1,022mm×1,592mm、面積1.63㎡
重量:18.2kg

ちなみに、一般的なサイズの畳(江戸間)は、880mm×1,760mm(面積1.54㎡)で25kg前後です。サイズ感や重さイメージの参考までに。

<住宅用の太陽光発電システムについて>
太陽光発電システムの容量は、モジュールの公称最大出力の合計で表されます。日本の住宅用のシステムでは屋根設置が主流で、10~15枚ほどの太陽電池モジュールによる、3~5kW規模のシステムが一般的です。

太陽電池モジュールの設置の様子。豪雪地帯にある「雪国飯山ソーラー発電所」では、軒下・壁面設置(スワロー工業・ソーラーウォール工法)を採用

モジュールのこれから

自宅でつくった電気をそのまま使う、余剰分は蓄電池やEVにためて使う「家産家消」という考え方が強くなってきた昨今、モジュールの品質や性能のさらなる向上が重要な役割を果たすことは事実です。1970年代より新しいエネルギーとして注目され、1990年代後半には日本でも広く知られるようになった太陽光発電。近年では、ハーフカットセル技術や両面発電、曇天下でもよく発電するタイプなど、高出力、低コスト化において飛躍的な進化を遂げています。再生可能エネルギーの普及が急がれる近い未来に向け、太陽電池モジュールメーカーではより効率的な発電を目指し、研究開発を日々続けています。

自然エネルギーと共にある、新しい暮らしへ

参考文献:
『太陽光発電システムの設計と施工』(一社)太陽光発電協会 編集
国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)

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