Photo: Takanori Ota、Lisa Obinata、太陽光生活研究所
太陽光生活研究所では、2020年から「雪国飯山ソーラー発電所」(長野県)をはじめとする複数のプロジェクトで、急斜度壁面設置太陽光発電の実証運転を継続してきました。これは、太陽電池モジュールを60度以上の角度をつけて壁面に設置するもので、雪はモジュールの表面から自然に滑り落ち、積雪を大幅に削減することができるしくみです。積雪によってモジュールが破壊されることも、住宅構造にダメージを与える心配もほとんどありません。
数年間にわたる同プロジェクトの成果が注目を集め、すでに、実際に設置をする住宅棟数も増えています。Qセルズやシャープなどからは、急斜度設置のための実用製品も発表されています。
これまでの実証実験から、モジュールを急斜度設置することで、太陽からの直達光に加え、地面などに反射した光を受光し発電量をアップさせることができることもわかりました。(ダブルサン効果:太陽光+地上反射光)。
一般的に太陽光の年間最大発電量を得るには、真南に30度強の斜度で設置すると良いとされますが、この角度では地上反射光はあまり得ることができません。また、夏場の熱損失も大きいという難点もあります。一方、斜度60度で設置した場合では、地上反射光と熱損失の減少により、5%程度の年間発電量差異に収まると想定されます。
豪雪地では冬場の暖房需要から、夏より冬の方が、エネルギー消費が多い傾向にあります。特に標高が高く、寒冷地に属する地域は冬のエネルギー消費量が増加します。雪国太陽光は、そんな冬場に最大効率を発揮できるよう開発されています。
冬、太陽高度は、南中時でも30度前後に下がってきます。60度から70度前後の斜度で太陽電池モジュールを設置すると、太陽が垂直に近い角度で向き合い発電量が増加します。一方、30度で設置された一般的な太陽電池モジュールは、大きく発電量が下がってしまいます。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(通称NEDO、以下NEDOと省略)が発行する、WEB版日本国内日射量データベース(MONSOLA-20)を用いて、長野県飯山市での月間日射量を太陽電池モジュールの設置角度ごとに比較すると、60度設置では30度設置と比較し、10月から3月の日射量が上回るのがわかります。
ちなみに、「雪国飯山ソーラー発電所」の実証実験からヒントを得た応用例として、「雪国野沢温泉村コンパスハウスソーラー発電所」(長野県)での「急斜度屋根設置太陽光発電システム」も開発されました。これは、通称「絶壁屋根」といわれる急斜度の屋根に、太陽電池モジュールを取り付ける工法です。比較的、一般の屋根置き太陽光発電システムに似た構造で、設置コストが抑えられるという特徴があります。雪国には絶壁屋根が多く見られ、この工法への関心度は高まっています。コンパスハウスでの実証実験を経て、シャープからはすでに実用商品も発表されています。
そしてもうひとつ、太陽光生活研究所は、「雪国ソーラーシェアリング」も提案しています。こちらは、地上高3mの架台に、太陽電池モジュールを急斜度で設置した工法。豪雪地でもモジュールに雪が積もることはありません。日当たりの良い庭など条件の良い空き地があれば設置できるのがメリット。もちろん農地への設置も可能です。
雪国で太陽光発電が難しいとされる理由とは
そもそも豪雪地帯の住宅に太陽光発電システムを設置することは、なぜ難しいのでしょうか。
太陽電池モジュールの一般的な積雪荷重性能は5400PAで垂直積雪量1.8m相当。太平洋側の非積雪地域で一般的に導入されている屋根置き太陽光発電システムの多くは積雪1m以下の積雪荷重を前提に設計されていて、積雪2m以上の地域に従来通りの方法で設置することは、まず難しいのです。無理やり付けたとしても、頻繁に雪下ろしをする必要があり、また積雪荷重や雪下ろしによる破損の危険性は免れません。
太陽電池の主要メーカーに問い合わせても、太陽電池モジュールの積雪荷重限界が一般的に1.8mであること、1.5m前後の積雪荷重をかけると壊れやすくなることから、特別な補強措置が取られていない限り、基本的には積雪2m以上地域への設置は認めていないといった回答が寄せられます。また、積雪により太陽光発電システムが損壊した場合、製品保証の対象外としていることが多いとされます。
太陽光生活研究所では、これまでの実証実験の結果をもとに、こうした豪雪地帯での難点を克服し、さらに雪国ならではの特徴を活かした効率的な太陽光発電のひとつのソリューションとして、「雪国太陽光」を提案しています。
「積雪2m以上、豪雪地での住宅太陽光発電システム」雪国太陽光とは
長野県知事が「雪国野沢温泉村コンパスハウスソーラー発電所」を視察