Vol.6  太陽光発電システム設置1年の振り返り

Photo: Takanori Ota

コンパスハウスの太陽光発電システムは、2022年の秋に設置され、同年11月より本格的に発電量などを記録し始めました。
Vol.3(活気ある冬を迎えて、「太陽光」の効果を実感!)では、気になる冬の発電状況についてレポートをしましたが、今回は設置から1年を経て、四季を通じてコンパスハウスのシステムがどのような実績を残したか、振り返ってみたいと思います。

南西の壁面にQセルズのモジュールを6枚設置。定格出力は3.48kW。冬の積雪問題をクリアするため、すでに「雪国飯山ソーラー発電所」で効果が実証された角度70度の壁面設置工法を採用

冬、どれだけ発電できるかがポイントに

コンパスハウスのオーナー、上野雄大さんの「地球温暖化を肌で感じる雪国だからこそ、再エネ活用に取り組みたい」という熱い想いを形にすべく、スタートしたこのプロジェクトですが、実は当初からひとつ大きな懸念点がありました。というのも、期待した発電量を得るのに十分な数のモジュールを設置できるスペースが、建物の南西側の壁面にしかなかったのです。とくに日が短くなり、太陽が南西に沈んでいく冬場に、この方角でしっかり日照が得られるのか、シミュレーションでもかなりきわどい数値が出されていました。

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の日射量データベースなどを参照し、南西向き壁面での発電について検討

こうした点も踏まえ、まずは毎月の発電量を、当初作ったシミュレーション値と比較しながら見てみましょう(表1参照)。

発電量だけを見ると、やはり日が長くなる春から秋にかけて好調で、毎月300kWh前後を記録。採用したQセルズのモジュールの性能が高かったことはもちろんですが、これに加え、野沢温泉村にあるコンパスハウスは、標高がおよそ500mと比較的高地にあり、また角度を付けて設置されたモジュールの裏側の風通しが良くなっていることも奏功。夏でもモジュール自体の温度上昇が抑えられ、高い発電効率が得られる結果に結びついたと考えられます。4月から7月にかけてはシミュレーション値よりもやや低い結果となりましたが、天候不順と南西向きの壁面という点も考慮すると、これは想定内の実績といわざるをえません。

表1. コンパスハウスの年間発電量とシミュレーション発電量の比較

一方、懸念されていた冬ですが、その数値は予想以上の結果となりました。シミュレーション値と比較すると、8月から3月にかけて連続で100%以上を記録。とくに11月は143%、12月が146%と、驚きの数字をたたき出しています。

これは、冬場の発電を一番に考え、冬至を基準に、モジュールを70度の角度を付けて設置した結果といえます。また、雪国飯山ソーラー発電所と同様に、その傾斜により、一時的に雪がモジュールに積もることがあっても、最終的には自然に滑り落ちるため、発電に積雪が影響することはありませんでした。加えて、12月から2月にかけては、隣接する駐車場に降り積もった雪により、地面からも太陽光が反射してモジュールを照らす「ダブルサン」効果も大きかったと思われます。

これを証明するように、この期間、システム定格の3.48kW以上を発電した瞬間は大変多く、とくに2月には10日にわたって定格以上の発電を記録。2月26日には4.8kWと、定格比141%となりました。また2月22日には、1日の発電量が年間でも最高となる19.8kWhに。さらに、2月16日には午後の約4時間にわたり、連続的に3.4kW以上を記録しています。通常の環境では、太陽光発電システムは定格の8割弱の出力が想定されているのですが(コンパスハウスのシステムの場合2.78kW)、冬場、この壁面設置で得られた電力は、シミュレーション値もはるかに上回る数値となりました。

雪面の反射光がもたらす「ダブルサン」効果で期待以上の発電量に

ちなみに、「ダブルサン」効果は、冬だけでなく、夏場にも見られました。モジュールが設置された壁の向かい側には露天駐車場が広がっており、その白っぽいコンクリート面が太陽光を反射。降雪のない10月や11月に4.0kW、3.8kWという発電量を記録したのも、この結果と思われます。屋根設置ではあり得ない、壁面設置ならではの利点。条件によっては、町中でもこうした思いがけない効果が起こりうることも明らかとなりました。

壁面設置のため、夏も隣の駐車場をはじめ周辺からの反射光を受ける
春にはモジュールに黄砂も降ったが、発電状況に大きな影響は出なかった

一年を通じて、雪国でのさらに好調な発電を目指して

年間で平均してみると、発電量はシミュレーション値の108%とかなり好調だったといえます。野沢温泉村のような豪雪地帯でも、太陽光発電を導入するメリットが大きいことが証明されたのではないでしょうか。

とはいえ冬場に期待以上の成果が出た分、どうしても夏の時期の数値が気になってきます。「冬至基準」によるシステム設置の宿命といえるかもしれませんが、夏にもさらに効率的に発電できる方法はないだろうか。そんな新たな課題も生まれてきました。

そんなわけで、コンパスハウスでは現在の状況に満足することなく、増設なども含め、太陽光発電をさらに進化させていく取り組みをあれこれ検討中です。

今後の新たな展開に、ご期待ください!

コンパスハウスでは、Eバイクの充電やスキー用具のメンテナンスなどにも太陽光で発電した電気を活用。上野さんは、さらに電気の自給自足に近づける環境を目指す
  • コンパスパウス COMPASS HOUSE とは

    長野県野沢温泉村、株式会社ドリームシップが経営するスキー、スノーボード、サイクリング関連のプロショップ。2010年オープン。スノースポーツやマウンテンサイクリングのギア販売からレンタル、チューニング、さらにはガイドツアーや選手の指導・育成などを実施。野沢温泉スキー場の長坂エリアにある「マウントドック Mt’ Dock」、温泉街にある「コンパスビレッジ COMPASS village」も同社営業の系列ショップ。代表者は元フリースタイルスキーヤーとしてワールドカップなどでも活躍した上野雄大さん。3児の父親であり、野沢温泉村スキークラブの副会長、野沢温泉村観光協会理事も務める。また2021年には野沢温泉村の村議会議員となり、同村の経済産業副委員長としても活動中。 https://compasshouse.jp/

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