Vol.3 活気ある冬を迎えて、「太陽光」の効果を実感!

Photo: Takanori Ota

2022年9月に念願の太陽光発電システムを導入したコンパスハウス。軒下壁面工法により豪雪対策も万全に、いよいよ設置後初めての冬を迎えました。厳しい環境の中、果たして期待通りの発電量は得られたのでしょうか。野沢温泉村の様子や、コンパスハウスの活動とあわせてレポートします。

村に多くの旅行者が戻ってきた!

例年に比べ、雪の少ない冬となった野沢温泉村。とはいえ、コロナが一段落ついたことでインバウンドの旅行者もだいぶ戻り、スキー場も温泉街も過去2年にはない賑わいを見せていました。

多くのスキーヤーや観光客で賑わう冬の野沢温泉村

スキーの販売やレンタル、各種のガイドツアーなどを行うコンパスハウスも、大忙しの様子です。
「インバウンドではとくにアジアの方が増えました。主にレンタルで利用していただいていますが、1月には2019年の同時期より忙しかった日もありました。一方、ガイドツアーは、主に日本のファンの方に楽しんでいただいています」
と、人気スキーリゾートならではのフル稼働ぶりです。

雪山に関わる「ヒト」「モノ」「コト」が集まる場所を目指すコンパスハウス
スキー場でレンタルなどを行う「マウントドック」や温泉街でグッズ販売などを行う「コンパスビレッジ」も運営
初心者から上級者までを対象に様々なバックカントリーツアーも主催。1月~4月に21本のツアーが行われる

さらに上野さんの奥様、眞奈美さんが中心となって企画した「NOZAWA PLAYCE」も、2023年1月にオープン。これはコワーキングスペースやフィットネススタジオ、コンドミニアムスタイルの宿泊施設、レストラン・バーを併せ持つ多目的施設。旅行者だけでなく村の人々も利用できる新スタイルのビジネスとして、注目されています。

コンパスハウスのすぐそばにオープンした「NOZAWA PLAYCE」。眞奈美さん(左上)は、2014年ソチオリンピックでスキーハーフパイプ日本代表として出場したアスリート

急増する電気使用量を「太陽光発電+蓄電池+深夜電力」でカバー

活気ある冬を送るコンパスハウスですが、それだけに電力消費量も多くなります。
「スキーのチューンナップやブーツの調整などで特殊機器の電力が必要な上、この時期は事務所にスタッフが泊まることも多く、夜間に床暖房を入れる必要もあります」
と上野さん。実際、秋と冬の電気使用量を比べると、1.3倍くらい増えています。

暖房はもちろん、スキー関連の機器の使用で電力消費量も急増

秋に設置した太陽光発電システムの働きぶりが気になるところ。稼働状況はどうでしょうか。

データを見ると、設置後から発電状況はかなり順調でした。通常の設置環境では、太陽光発電システムは定格の8割弱の出力が想定されているのですが、コンパスハウスのシステムは定格3.48kWのところ、4kWを超えることも珍しくなく、2月16日にはなんと4.4kWと、想定をはるかに上回る数値をたたき出しました。これは、高性能のモジュールとパワコンが効率よく働いていることに加え、目の前にある駐車場のコンクリート面に光が当たり、壁面設置したモジュールにうまく反射、また雪の季節にはこの駐車場をはじめ周辺の雪面がさらに強烈に太陽光を反射するという「ダブルサン」現象が起こった結果と思われます。雪国壁面設置ならではの効果が、ここでも実証されることになりました。

目の前の駐車場をはじめ、周辺の雪原からの反射による「ダブルサン」現象により、驚くほどのパフォーマンスを発揮
雪が降っても、70度の角度をつけて壁面設置したモジュールからは自然に滑雪(写真提供:コンパスハウス)

一方、毎日のデータを検証してみると、お店ならではの電気使用パターンが見えてきました。とくに朝は、始業後からモジュールに日が差して太陽光による発電が十分行われるまでの間、どうしても買電が必要になっていることが分かりました。

そこで、さらなる省エネ&経済対策として、電力会社との契約そのものを見直し、割安な深夜電力を活用するプランに変更。夜の間に蓄電池に充電をして、朝など太陽光の発電量が少ない時間帯の電力をここから賄うことに。試算したところ、この「太陽光発電+蓄電池+深夜電力」の活用で使用電力量の90%がカバーでき、しかも電気料金も3分の1程度に抑えられるという結論に。(詳細はコチラ)。

11月後半にこのプランに変更したところ、さっそくその成果は出たようです。
「これまで、冬の電気代は1ヶ月4~5万円くらいかかっていました。ところが、今年1月の請求額はその半分程度になりました」
と上野さんも期待以上の結果に驚いた様子です。

そもそも12月から1月にかけては、日照時間自体が少なく一年でも最も発電量が少なくなる上、暖房などにより電気消費量が最も多くなる時期。しかも電気料金が高騰しているこのタイミングで、従来の半額程度に抑えられたということは、かなりの好成績といえます。また昼間には余剰発電分の売電も順調に行われており、それも計算に入れれば、経済効果はさらに大きくなります。年間にならしてみれば、試算通りにこれまでの3分の1程度の電気料金で抑えられることが期待できそうです。

省エネ&経済対策後のコンパスハウスの電力データ。深夜電力を利用し、夜中3時から蓄電池に充電。朝と夕方、太陽光による発電がない時間帯は蓄電池からの放電でカバーされ、割高な日中の買電はほとんど不要となっている

コンパスハウスに壁面設置されたモジュールは、道路から見ても目立っており、周囲からの反響も大きいようです。上野さん自身は、村の自然を守るために、との思いから太陽光発電を導入したわけですが、
「実際には、環境を考えてというよりは、やはり初期投資はどれくらいで回収できるかなどコスパについての質問が多いですね。今は電気代が急騰していることもあり、売電よりむしろ、自家消費によって電気代が節約できるという点に興味が引かれるようです。温暖化防止を前面に出して再エネの話をするのはハードルが高いですが、こうした経済パフォーマンスがフックとなるのであっても、関心が高まるのは、いいことではないでしょうか」

野沢温泉村の中心街入り口にあるコンパスハウス。飯山方面から県道38号線を走ってくると、南側の壁面に輝く6枚のモジュールが目を引く

冬にも十分な力を発揮する太陽光発電システムの効果を実感した上野さんは、すでに一歩先の段階まで考えているといいます。
「最終的には完全に電気を自給自足できる環境にできたらいいなと思っています。そのためには、例えばモジュールを増設するとか、また小さな電気自動車を利用して蓄電池代わりに使うのはどうだろうなど。こうして実際に使ってみると、もっと自給率を上げるためには具体的に何が必要か見えてくる。自給自足も決して夢ではないなと、感じています」

野沢温泉村の伝統行事「道祖神祭り」
1月13日から15日の3日間、野沢温泉村では恒例の「道祖神祭り」が開催されました。これは、この村に江戸時代から続くといわれる伝統行事。重要無形民俗文化財にも登録され、日本三大火祭りのひとつにも挙げられる勇壮な祭祀です。
中心となるのは、40~42歳と25歳の厄年の男性で、今年42歳となる上野さんも、3年間にわたってこのお祭りに力を注いできました。時には仕事を後まわしにしてでも村の行事に関わる必要もあったのだとか。道祖神祭りをやり遂げ、その大役も終了しました。
「ほっと一息ついた感じですね。これからは、村議会の仕事にもさらに力を入れたいですし、個人的にはまたスキーの大会などにも出てみたい。夏には、中断していたトライアスロンも復活しようかなと。そして何より、この間は家族の理解と協力があってこそだったので、子供達との時間もたっぷりつくっていこうと思います」

山から切り出した御神木で社殿が建てられ、たいまつを持って襲いかかる火付け役と社殿を守る火消し役が壮絶な攻防戦を繰り広げる。最後に、社殿は奉納された巨大な灯籠と共に天高く燃え上がる

太陽光生活研究所では、こうした各地の文化や風土も、将来に向けて守っていくべき大切な「環境」のひとつと考えます。野沢温泉村の独特な文化については、次の機会にさらに詳しくご紹介したいと思います。

  • コンパスパウス COMPASS HOUSE とは

    長野県野沢温泉村、株式会社ドリームシップが経営するスキー、スノーボード、サイクリング関連のプロショップ。2010年オープン。スノースポーツやマウンテンサイクリングのギア販売からレンタル、チューニング、さらにはガイドツアーや選手の指導・育成などを実施。野沢温泉スキー場の長坂エリアにある「マウントドック Mt’ Dock」、温泉街にある「コンパスビレッジ COMPASS village」も同社営業の系列ショップ。代表者は元フリースタイルスキーヤーとしてワールドカップなどでも活躍した上野雄大さん。3児の父親であり、野沢温泉村スキークラブの副会長、野沢温泉村観光協会理事も務める。また2021年には野沢温泉村の村議会議員となり、同村の経済産業副委員長としても活動中。 https://compasshouse.jp/

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