Vol.3 積雪4mにも対応する突破口を見つけて、ついに太陽光発電システムの設置へ

Text & Photo: Lisa Obinata Photo: Takanori Ota, Delta Electronics (Japan), Inc.

連日、夏野菜の収穫に追われる頃、豪雪地での太陽光モジュール設置について奮闘していた高嶋さんから、ようやく良い知らせが届きました。

出来すぎた野菜は東京の母へ送ったり、加工品を作ったりとなかなか忙しい

様々な方法を模索した結果、出た案はこちら。
*モジュール(パネル)は屋根ではなく、軒下の壁面に付ける。
*屋根ほどの面積が取れない分、東南面と南西面の2面に取り付ける。
*滑雪性を高めるために、斜度が必要でそのための架台を開発する。
*最大積雪時にも埋まらないよう十分な地上高を確保する。

これならそれなりの発電量も確保できそうということで、私たちも大賛成。当初イメージしていた雪が降る前に設置という方向性で正式に進めることになりました。

手前が東南面、陽が当たっているのが南西面

モジュールは、高緯度地帯での低照度でも高い発電効率を誇るドイツ系太陽電池メーカーQCELLSの一般に販売されている標準モジュール、架台は雪止め金具など屋根関連の金具を製造・販売する新潟県燕市のスワロー工業のSKソーラーウォール、パワコンと蓄電池は昼間発電した電気をしっかりと蓄電できるデルタ電子のハイブリッド蓄電池SAVeR-Hを採用、架台およびモジュールを住宅壁面につけるための補強工事を、我が家を建てた江口建設、電気工事は地元の協立電機が請け負うことまで一気に決まりました。

一般的には太陽電池メーカーやその代理店が、太陽電池、架台、蓄電池&パワコンを一式セットで施工業者(販売店)に卸し、工事も数日で終わるのだそうですが、我が家の場合、豪雪地のため一般の施工業者が近所にいない、かつ壁面設置というチャレンジングな試みのため、設計、部材確保、施工工事をいろいろな企業に参加していただくことになりました。

壁に取り付けると決まり、気になったのは景観のこと。枚数が多ければ多いほど発電量は高くなるのだけれど、ほとんど見えない屋根上とは違い、モジュールで外壁が埋め尽くされるのは、できれば避けたいところ。

壁面積が大きい東南面は比較的イメージしやすかったけれど、大きな窓が特徴的な南西面は、室内から外の景色を眺める時にモジュールに視界を遮られないこと、丸太の手すりの意匠を損なわないことを、お願いしました。また、発電力は若干落ちるもののデザイン性に富んだオールブラックのモジュールを選択。

高嶋さんが出してくれたモジュール設置プラン

モジュールの枚数だけでなく、モジュールサイズや積雪の想定、軒下の影がどのくらい伸びるかによっても発電量は変わるとのことで、景観を重視しつつ、できるだけ発電量を得られる設置レイアウトを考えていただきました。後で知りましたが、飯山市には景観条例があり、江口建設が外観の変更を届け出、市の認可を得ていました。

スワロー工業さんの既存の屋根用金具に手を加え、壁面で架台として活用するため開発会議

8月の終わり、関連業者の皆さんと打ち合わせ。架台の角度や塗装、結合部の仕様、電気工事のことなど、決めることは山ほどありますが、専門的な話はプロにお任せ。架台は9月中に製造、10月から補強材設置の工事が始まり、10月下旬にはモジュールの設置完了というスケジュールが出て、いよいよ現実味を帯びてきました。

黄金に揺れる稲穂や紅葉、虹もよく顔を出した秋の風景

秋は、私の本業である雑誌製作がもっとも忙しい時期で、飯山の美しい景色も窓から楽しむ程度。10月頭には、足場がかかり、壁面の補強工事が始まりました。大工さんがコツコツと作業している音を聞きながら、私もパソコンに向かい原稿書きの日々。

江口建設さんによる壁面の補強工事。外壁と同色に塗装した桟木を通してゆく

補強工事が完了すると、架台やモジュールが次々とトラックで運ばれてきて、太陽光システムの施工工事の始まりです。約4日間かけて、架台とモジュールの取り付け、パワコン&蓄電池の設置、電気工事、電灯線との連系と進んでいきます。

工事初日は秋晴れ。まずは架台を取り付けていく
効率的に太陽光が受けられるよう角度70度で開発されたスワロー工業さんのSKソーラーウォール架台。ブラウン塗装は特注。景観にも配慮
1枚20kg近くあるモジュールをロープを使って慎重に荷揚げ

モジュールの架台への取り付けに電気の配線工事と、チームワークで着々と作業が進む
後半は室内の電気工事が中心。パワコン&蓄電池はガレージ内に設置

たくさんの業者さんが出入りする中、我が家の愛猫、空くんはみなさんの近くにピタッとついて、作業を監督! 時にはお邪魔もしていたけれど、「ソーラー」くんという名前をつけていただき、可愛がっていただきました。

手伝っているのか、邪魔しているのか、職人さんのそばから離れないソーラー監督

暑いくらいの気候だったり、途中から冷たい雨が降ってきたり、電気系がなかなかうまく繋がらなかったりと、ちょっとしたトラブルもありましたが、10月23日、ついに全ての工事が無事完了! 

工事期間中はただ見守るしかできないけれど、工事完了後からすぐ発電すると聞いてワクワク

仕上がりの外観も、建物にうまく馴染んでいる印象で、ホッと安心。

こうして一連の施工を見届けると、予想していた以上に多くの方々が携わって、チームプレイの上で成り立つものなのだなと、今更ながら実感。そして本プロジェクトに関わってくださった皆さんが、豪雪地でのチャレンジという点に面白がって、アイデアを出し合って、ここまでたどり着けたことに、本当に嬉しく思いました。

いよいよ太陽光生活が始まります!

  • 尾日向梨沙

    1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年11月からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、自分なりのソリューションを試行錯誤中。

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