Vol.3 「雪国飯山ソーラー発電所」の1年を総括

Photo: Takanori Ota

電気の自給自足を目指し、「雪国飯山ソーラー発電所」を開設して1年。決して条件がいいとはいえない豪雪地帯で、様々な工夫をして設置された太陽光発電はどのような結果を出したでしょうか。
発電量などのデータを元に、モジュール位置や角度、設計などの面からその成果とポイント、さらには今後の課題について考察しました。

年間実績はシミュレーション値の112%!

表1は、「雪国飯山ソーラー発電所」の1年間の発電量などを月別に概算で表したものです。毎月の平均日照時間で算出したシミュレーション値に比べ、実際の発電量は平年値では8割方で上回っていることがわかります。そして12ヶ月総じては、シミュレーション値に対してプラス112%という実績がでました。また、年間の総発電量と総消費量はいずれも約5,000kWhで、1年を通して見れば電力の自給自足という目標もほぼ達成といえます。豪雪対策として、角度70度の壁面設置などの工夫をこらし、多くの条件がある中で稼働した発電システムとしては、良好な結果といえます。では具体的に何が奏功したのか、実証中の驚きや発見も含め、下記の5つのポイントをまとめてみました。

表1 雪国飯山ソーラー発電所 1年間実績 概算(システム:5.44kW)

ポイント① 夏至前後に軒の影の影響を受けづらいモジュール設置位置

「雪国飯山ソーラー発電所」の稼働後、一番気になっていたのは、夏至前後の発電量です。なぜなら、ここでは、雪対策としてモジュールを屋根ではなく軒下に設置したため、太陽の位置が高くなる夏至前後の日々はどうしても軒の影の影響が想定されたからです。軒のひさしと太陽の夏至南中時の位置から、三角関数で計算し、軒から何センチ下にモジュールを設置するのがベストかを割り出したわけですが、図面上の計算と実際とではズレがでることがあります。もちろん、軒下である以上どうしても影の影響は受けますが、それでも結果的には夏至前後もシミュレーションよりもプラスの実績値が出てほっとしています。軒下設置を行う場合、このモジュール設置位置の計算は、かなり慎重に行う必要があると実感しています。

太陽電池モジュールは、軒の影の影響を考慮した壁面設置に

ポイント② 夏でも高温の影響を受けづらい設計

夏場の発電量がシミュレーションを上回ったもうひとつの要因として、モジュールが高温にならない設計だったこともあげられます。「雪国飯山ソーラー発電所」は、そもそも標高が高い寒冷地にあるため、夏場の気温があまり上がらないという点では優位な条件下にありますが、これに加えて通気性に優れた軒下壁面設置構造により、熱がこもらずモジュールが効率よく働き、想定よりも1段階上の発電を可能にしたのだと思います。

通気性に優れた軒下壁面設置構造(モジュール設置前の架台)

ポイント③ 冬場の瞬間発電量をMAXに押し上げた「冬至基準」の設計+「雪の反射光」

一般的に太陽光発電システムは、夏至前後に一番発電するように「夏至基準」で設計されています。具体的には、夏至の午前9時~10時ころに周辺からの影の影響を受けず最大に発電できる角度や位置に設置するわけです。この場合、当然ながら太陽の高度が低くなる冬場の発電量はかなり落ちてしまいます。
そこで、「雪国飯山ソーラー発電所」では、冬場の発電量を最大化させるという逆転発想を軸に、「冬至基準」の設計をすることにしました。この効果は大きかったといえます。実際、冬の間、瞬間発電量がシステムの限界レベルまで達したことが何度もありました。想定以上の発電が実現したというわけです。また同時に、1月~3月の間は雪の反射光によりさらなる効果が生み出されました。雪面がレフ板となり、壁面設置のモジュールを直撃。これは、日照量のみからのシミュレーション計算で反映されることのない、驚くべき発見でした。

冬の間、モジュールは太陽光と共に、雪の反射光も受ける

ポイント④ 2方向のモジュール設置による「ダブル発電」で電力の安定供給

「雪国飯山ソーラー発電所」では、家屋の東南側と南西側の壁面にそれぞれ8枚ずつ、合計16枚のモジュールを設置した「2方位2壁面≪ダブル発電≫システム」を導入。独立した2基の太陽光発電システムがあるかのようなパフォーマンスを想定したわけですが、これについても期待通りの結果を得ることができました。
分かりやすい例として、電力会社からの送電をあえて遮断して実験した「オフグリッド体験」の日のグラフ(図2)で説明しましょう。朝6時にはすでにシステムが起動し始め、8時ころにはフル発電状態となります。夜の間にほぼ空っぽになりつつあった蓄電池も、日の出以降の発電と同時に充電が始まり、昼12時前には充電完了となりました。また別の日のデータを見ると、発電量のピークは午前と午後の2回あるのがわかります。(図3)
このように、早朝から発電が可能となっており、また発電が午前、午後に偏ることなく、1日中まんべんなく発電することができるのが、この仕組みのメリット。たとえ曇りや雨の日でも、1日のうちどこかで晴れれば、そのタイミングを逃さずに発電が可能となります。

➢ 「太陽光ダブル発電システム」の詳細はうら話Vol.2

図2 オフグリッド体験時の発電状況。オフグリッド時は、売電、買電ができないため、発電量と、消費量(含む蓄電量)が同一となる現象が起きる
図3 7月中旬の発電状況。1日中まんべんなく発電している

ポイント⑤ 豪雪の中でも実力を発揮した傾斜角70度の壁面設置

ここ2シーズンにわたり冬期の降雪量はかなり多く、各地で積雪によって機能しなくなったり破損したりした太陽光発電システムはかなり多かったようです。雪の降る地域であっても、一般的にモジュールに30度~50度の角度を付ければ雪は自然に滑り落ちるとされてきましたが、実際には50度あっても厳冬期では湿った雪などがモジュール面に凍りつき、落雪しないという現象が起こることがあります。
「雪国飯山ソーラー発電所」では、そもそも屋根設置ができたとしても30度しか確保できなかったため、思い切って70度の角度を付けた壁面設置にしたわけですが、これが大正解でした。たとえ厳冬期の湿って重たい雪でも、70度の傾斜ではあまり張り付かない、表面に多少雪がついても光は通るので発電し、発電が始まるとモジュール表面が少しずつ温かくなって雪は滑り落ちる。実際、大雪警報が発令された豪雪日でも僅かな電力でしたが発電しました。この70度設置というのは、今後の雪国における太陽光発電の一つのヒントとなるかもしれません。

70度の角度を付けた壁面設置で豪雪の中でも実力を発揮

課題となるのは冬場の電力自給率

1年間のデータを改めて見ると、3月~11月にかけては、日中(9時~17時頃)の買電はほとんど無く、実質的に電気の自給自足状態にありました。エコキュートなどが稼働していため、夜間に買電が必要にはなりましたが、これは今後、蓄電池を増設することにより解決できるのではないでしょうか。
問題は、やはり冬です。このシステムは前の項目でも紹介したとおり冬至基準で作られていることもあり、1日単位の発電量は、実は夏場より冬の方が多いのですが、それでも12月~2月の数ヶ月は、名目上の電力自給率(発電量/消費量)は30%~40%という状態になります。これは、暖房をはじめとする電力消費量が急増するためで、現状のシステムではこれが限界といえるでしょう。
冒頭でも紹介したとおり、1年でならせばほぼ自給自足が達成できているわけですが、冬場、特に厳冬期に、化石燃料に再生エネルギーでどこまで電力確保できるかは、今後の大きな課題となりました。

再生可能エネルギー全体に視点を広げることが大切

冬場の電力自給率アップも目指すとなると、今後はどんな展開が可能でしょうか。たとえば、モジュールの増設、ソーラーシェアリングの導入、大容量蓄電池の代わりとなるEVの導入などが考えられます。とはいえ機器を増やすのには、スペース的にも経済的にも限界があります。ましてや一般家庭でもある「雪国飯山ソーラー発電所」で、太陽光発電だけで完全に電気の自給自足を実現するのはかなり難しいのも現状です。
太陽光生活研究所としては、ここでただ諦めてしまうのでなく、視点を変えて「では何ができるか」を検討することこそ大切だと考えます。
たとえば水力や木質バイオマスによる発電を推進する、冬にも発電力のある地域から再生可能エネルギー由来の電力を融通してもらう仕組みを作る、など地域としての取り組みを考えていく必要もあるかもしれません。実際、様々な自治体ではそんな動きもあり、すでに太陽光生活研究所への問合せも少なからずあります。
太陽光発電にとどまらず、再生可能エネルギー全体を未来の一つのソリューションとして考えるべき。今後ますます視野を広げた取り組みが必要になる――。「雪国飯山ソーラー発電所」の1年を振り返り、改めてそうした思いを強め、同時に「RE100」「CN2050」などに向け、これから必要なことが見えてきたように思います。

  • 高嶋健

    太陽光発電システムプランナー。2003年よりシャープ米国(Sharp Electronics Corporation)で太陽光発電事業に従事。2012 年、カナディアン・ソーラー・ジャパン、2017年、サンテック・パワージャパンでマーケティング部長、 SCM調達本部長を務める。現職、デルタ電子株式会社、エナジーインフラ営業本部マーケティング企画部マネージャー。

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