Vol. 2 いよいよ太陽光発電システムの設置工事へ

Photo: Takanori Ota、太陽光生活研究所

2022年9月6日、快晴。コンパスハウスでは太陽光発電システム設置工事の日を迎えました。暦の上ではすでに秋ですが、朝から強烈な太陽が照りつけ、標高約600mの野沢温泉村でも一気に気温は上昇。そんな中、コンパスハウスには村内の電気工事会社ながや電気の皆さんが集まり、さっそく作業が始まりました。今日と明日の2日間で、壁面に架台を設置し、モジュールを固定。さらに配線を整え、蓄電システムなどとの接続まで行う予定です。

今回の太陽光発電システムについて、改めてご紹介しておきましょう。設置を進めるのは、上野雄大さん。スキーやサイクリング関連のプロショップ「コンパスハウス」のオーナーで、また野沢温泉村の村議会議員も務める彼は、「村の貴重な資源でもある“雪”を将来的にも守っていくため、温暖化防止に向けて具体的にできることを」との思いから、まずは自店舗に再生可能エネルギーを導入したいと考えました。(詳細はこちら)。

上野雄大さん、コンパスハウスにて

けれども、この野沢温泉村は豪雪地帯のため、一般的に行われる太陽電池モジュールの屋根設置は現実的ではありません。そこで、上野さんはお隣の飯山市で成功した「雪国飯山ソーラー発電所」に倣い、積雪に強いモジュールの壁面設置という方法で太陽光発電システムを導入する事にしました。

コンパスハウスの太陽光発電システム概要

モジュールを設置するのは、建物の西南西に面した壁です。ここに、上段2枚、下段4枚の合計6枚のモジュールを70度の角度をつけて取り付けます(“角度70度”の誕生秘話はこちら)。

モジュールは、Qセルズの「Q. PEAK DUO XL G11.3」という新製品です。実はこれ、メガソーラー発電所用のモジュールで、縦横は1134×2416mmというビッグサイズ。一般の住宅に使われるのは希なのですが、限られた壁面スペースで最大発電量を確保すべく、様々な太陽電池を検討した結果、このQセルズの最新型モジュールがピタリとはまったのです。1枚あたり580Wという業界トップクラスの大出力を誇り、変換効率も21%以上と高性能。また低照度の環境にも強く、野沢温泉村の気象条件に対応する点もポイントとなりました。発電出力は3.4kWで、平均して10kWh~15kWh/日の発電量を得られます。

住宅用よりもかなり大きなモジュール。セル上にほんの小さく「Q」と刻印されているのがQセルズ製品の証

モジュールを支える架台は、新潟県燕市スワロー工業の「SKソーラーウォール」。「雪国飯山ソーラー発電所」を計画した際に、既存の折半屋根用架台をベースに壁面設置用に改良した架台です。今回は大型モジュールに合わせてひときわビッグサイズのものが用意されました。壁面設置の場合、見る位置によっては架台もかなり目立つため、建物やモジュールとも違和感のないチャコールグレーの塗装が施されています。

SKソーラーウォールはパッケージから出してその場で簡単に組み立てられる

コンパスハウスでは、Eバイクのレンタルなども行っており、その充電も含め、年間を通じて電気使用量はかなりのものとなります。上野さんは、自家発電した電気の余剰分は売るよりもまず蓄電して、できる限り建物内で使いたいと考えました。そこで、今回は大型の蓄電池も導入することに。

採用したのは、デルタ電子の系統連系型蓄電システム「SAVeR-AC」のダブルバッテリーシステム。これは、2つのバッテリーで構成される、定格容量12kWh蓄電池システムです。太陽光発電と組み合わせて、コンパスハウスの平均的な一日に使用する電力を賄うことができます。さらに、停電時には自動で蓄電池が起動、建物内に電力を供給します。停電時でも太陽光発電は正常時同様に発電するので、日照があれば電力を安定して継続供給することができます。

ちなみに、設置工事を前に、すでに8月には足場が組まれ、壁の補強も兼ねた基礎的な工事は終わっています。コンパスハウスの建物は、構造は大変しっかりしていますが、築42年という古いもの。一般的な住宅用・太陽光発電は築20年以内の住宅に設置するケースが多く、築年数が古いと屋根の改修が必要となることもあります。壁面であれば、建屋の構造強度がしっかりとしていれば、古屋でも太陽電池モジュールを取り付けることができます。

とはいえ、念のため、しっかりと補強を施すことに。まず、壁の間柱(縦に等間隔に入っている下地材)の位置に外から120×60mmの添え木をあてて家の構造を補強しました。そしてこの上に水平方向に架台を設置する桟木を固定。一般的にモジュールを屋根設置する場合に使われる桟木は45×90mm程度のものですが、今回は大型のモジュール設置ということもあり、120×120mmの構造材レベルの木材を利用し、より強度を高めました。

朝から始まった工事は着々と進みます。職人さん達が身軽に狭い足場を行き来し、桟木の上にはあっという間に横桟部品が取り付けられました。そしてその上に傾斜のあるSKソーラーウォールが整然と固定されていきます。

架台のベースとなる横桟部品
70度の角度を付けたSKソーラーウォール

午後にはいよいよモジュールの取り付け作業に。暑いばかりでなく、強風にも見舞われたこの日、大型のモジュールの取扱いにはかなり難儀しました。パネル面が風を受け、まるで凧のようにあおられます。吹き飛ばされないよう、大勢で支えながら足場へ、そして架台の上に運んで固定。スペースが限られている中、これを6枚分繰り返すという大仕事となりました。

強風の中、大きく重たいモジュールを慎重に運んで取り付け

最後はケーブル関係をまとめて屋内に引き込み、系統連系型蓄電システムなどと接続へ。蓄電池「SAVeR-AC」は、コンパスハウスの2階に設置する事になったのですが、2つのバッテリーがあり、それぞれ60kg、78kgとかなりの重たさです。職人さんが頑張って運搬していると、なぜか近所の方々あちこちからやってきて、あの手この手で手伝ってくれることに。とくにお願いをしたわけでもないのですが、なんとなく見ていた方達が、自主的に参加してくれたわけです。野沢温泉村の人々の互助精神を垣間見た瞬間でした。

コンパスハウス2階に置かれたSAVeR-ACのダブルバッテリー(写真左)。パワーコンディショナは1階に

皆さんの協力もあり、モジュールの設置など外工事は予定より早く1日目に終わり、蓄電システムへの接続も含め、工事は2日間で全て完了。

さっそく電力会社との系統連系も開始。正式名称は「雪国野沢温泉村コンパスハウスソーラー発電所」に。ついに、コンパスハウスの太陽光発電生活がスタートしました!

設置された6枚のモジュール。工事を担当した「ながや電気」の皆さんと上野さん

野沢温泉村の秋祭り

設置工事の翌日から2日間、野沢温泉村では毎年恒例の「野沢温泉燈籠祭り」が行われました。上野さんもその準備で大忙し。工事中も村内各所とコンパスハウスとを行ったり来たりという状態でした。

このお祭りは、村内にある湯澤神社の例祭で、毎年、灯籠行列や伝統的な舞、花火、御神輿かつぎなどが繰り広げられます。今年はコロナの影響により一部縮小して行われましたが、ハイライトである伝統芸能「猿田彦命の舞」「獅子舞」「三十六歌仙舞」は、8日夜に無事に行われました。上野さんも役員として見守りへ。お祭りが大好きな村の人々と共に、賑やかなひとときを楽しみました。

野沢温泉村ではこのほかにも、たくさんの伝統行事が行われています。その独特の文化については、また別の回で改めてご紹介したいと思います。

温泉街で子供達が披露する「六歌仙の舞」や神降臨の先導者である「猿田彦命の舞」などが行われた
屋台が並び、賑やかな中にも伝統の趣が漂うお祭りの夜
  • コンパスパウス COMPASS HOUSE とは

    長野県野沢温泉村、株式会社ドリームシップが経営するスキー、スノーボード、サイクリング関連のプロショップ。2010年オープン。スノースポーツやマウンテンサイクリングのギア販売からレンタル、チューニング、さらにはガイドツアーや選手の指導・育成などを実施。野沢温泉スキー場の長坂エリアにある「マウントドック Mt’ Dock」、温泉街にある「コンパスビレッジ COMPASS village」も同社営業の系列ショップ。代表者は元フリースタイルスキーヤーとしてワールドカップなどでも活躍した上野雄大さん。3児の父親であり、野沢温泉村スキークラブの副会長、野沢温泉村観光協会理事も務める。また2021年には野沢温泉村の村議会議員となり、同村の経済産業副委員長としても活動中。 https://compasshouse.jp/

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