Vol.11 野沢温泉でマウンテンバイク。秋の里山を駆け抜けて

Text: Lisa Obinata, Photo: Takanori Ota, Special thanks: Nozawa Onsen Snow Resort

雪を求めて、神奈川から長野へ移住した私たちですが、雪のないシーズンも自然の中で身体を動かしたくなるフィールドが無数にあるのが、ここ北信エリアの魅力です。7月のEバイクツアーに続き、ずっと気になっていた野沢温泉のマウンテンバイク(以下MTB)ツアーに参加してきました。

隣村にある野沢温泉スキー場では、広大なゲレンデをグリーンシーズンも上手に活用しています。その代表でもあるMTBコースは、標高差800mもの距離をゴンドラを使って繰り返しダウンヒルできるというもの。国内でも屈指の長さを誇る本格MTBコースなのです。

9月中旬、あたり一面、稲穂が垂れ始め黄金色に染まる頃、パートナーの健とともに野沢温泉へ。サイクル道具は何も持っていないけれどもレンタルできるということで、長坂ゴンドラ乗り場にやってきました。ゴンドラ乗車券売り場の横にはズラリとレンタル用のMTBが並びます。ここは、冬はスキーショップ、グリーンシーズンはMTBツアーなどを主催する「COMPASS HOUSE(コンパスハウス)」が運営。10年近く前から、MTBのコース作りと管理もコンパスハウスのスタッフたちが手がけています。

用意してもらったのは世界トップブランド「スペシャライズド」の最新MTBに、ヘルメット、ヒザとヒジ用のプロテクター。レンタルだけして、自由に走ることもできるけれど、不慣れな私たちはガイド付きのツアーを選択しました。

昨年、架け替えられた長坂ゴンドラリフトは、旧ゴンドラよりもずっと内部が広く、MTB2台を持ち上げることもなく簡単に載せることができます。バイクと一緒に乗車しても、大きな窓から外の景色を楽しめるくらいゆとりある空間です。

10分弱の空中散歩を経てゴンドラを降りると、少し冷んやり。標高1417m地点でガイドのマサさんがMTBの基本操作を教えてくれます。MTB経験は数回あるけれど、かなり久しぶりな上に、本格的なコースにやや緊張気味の私たち。

コースに入る前に、簡単なアイテムを使って練習できるスキルアップゾーンが用意されていました。小さなアイテムでもまだ身体がこわばってうまく乗れません。。コースは、初心者、中級者、上級者用と色分けされており、グリーンの初心者コース中心に下りましょう、とのことで、いざスタート!

先頭を行くガイドは、カリフォルニア出身のウッディーさん。スノーボード好きで野沢温泉にやってきたそうですが、MTBトレイルビルダーとして海外経験もあり、野沢温泉のMTBコース作りにも貢献。水の流れや、自然地形を理解し、走りやすく面白いコース開発をしているそうです。

コース前半は、一面にススキが広がるオープンなゲレンデを下ります。冬、いつも滑っている緩やかな「上の平ゲレンデ」も、MTBだと斜度があるような錯覚。「パラダイスゲレンデ」を駆け下りると、スキーの滑走感を思い出すくらい、新鮮な気持ちになります。

途中から少し細いオフロードに入ったり、コースとコースの間の舗装路ダウンヒルでスピードに乗ったり。とにかく長く、全て下りなので、風を切り、緑と土の香りを感じる爽快感が永遠と続きます。「気持ちいい〜!」と何度も叫んでしまいました。

最初は、ゴンドラで登って下りて何本も繰り返し走れていいね、なんて言っていたけれど、下まで下ってみたら1本でも満足してしまうくらいの充足感でした。けれども違うコースも行ってみたい!ということで2本目。

今度は中級コース中心に、森の中を走ります。コース入口の木の案内板も、マサさんやウッディーさんたちスタッフの手作り。ふたりは、ロープが外れてしまったところがあれば直したり、走りにくいところを整えたりと、ツアー中も誰もが安全に下りられるようコース整備を心がけています。

中級コースは、たまに難しいセクションが登場しヒヤっとするけれども、バランスを崩してもすぐにリカバリーできることが多く、最新MTBの性能の高さに驚かされました。そして、木の根っこや石が露出しているような森の中のトレイルこそ、MTBの醍醐味が感じられるセクション。特にブナの森はふかふかの枯葉の絨毯の感触が優しく、曲がりくねった道をスピードに乗ってクリアしていくスリルを味わいながら堪能!

ガイドのマサさんやウッディーさんは、ジャンプをしたりバンクに当て込んだりと、自由自在。そこまでのチャレンジはできないけれど、長く走っているうちに、だいぶ慣れて気持ちに余裕が生まれてきました。

途中、絶景ポイントで一息ついたり、小さなアイテムに挑戦してみたり。1本目とは全く違うルートを下り、野沢温泉の自然の深さを噛み締めます。

スキーでも、森の中を滑ることが大好きですが、感覚としては本当に近いものがあり、自然と一体になれる心地よさを抱きながらのツアーとなりました。ちなみに、これまでは夏の2ヶ月間がサマーゴンドラの営業期間でしたが、ゴンドラが架け替わったことで今年は10月31日まで営業しているそうです。紅葉シーズンも良さそうですよ!

今回は長坂ゴンドラ乗り場でフルセットレンタルしましたが、コンパスハウスは野沢温泉の温泉街の中心にもショップ「COMPASS VILLAGE(コンパスヴィレッジ)」を運営。こちらでは最新MTBのほか、Eバイク(電動)のMTBのレンタルも行なっています。坂の多い野沢温泉村内をEバイクでサイクリングしたり、外湯めぐりに使うのも楽しそうですね。

人口約3500名のコンパクトヴィレッジ、野沢温泉村の魅力は書き切れないくらいたくさんあり、これからが楽しみな場所でもあります。それは、スキー選手として世界を転戦してきたスキーヤーたちが、生まれ故郷に戻り、世界で得た知見やスキーを通して養った豊かな感性を生かして、村に還元しようと動き始めているから。今回お世話になったコンパスハウス代表の上野雄大さんもそのひとりで、スキーや自転車の顔を持ちながら2021年から村議会議員として活躍中!

豊かな自然資源を誇る野沢温泉村では、再生可能エネルギーを地域エネルギーの中心に見据える案も出ていると聞きます。すでに野沢温泉中学校の壁面には太陽光パネルがずらりと設置され、学校で消費する電力の一部を補っているほか、天然雪を活用した雪室(冷房)を導入している施設や、温泉の排湯を生かしたロードヒーティング(融雪)などもあり、自然エネルギーを取り入れています。

ウインタースポーツやアウトドア好きが多く暮らす村だけに、日常的に車ではなくスポーツバイクで移動する人が多かったり、最近ではEバイクの普及も進み、今後ますます環境負荷の少ない観光地として発展していくことを楽しみにしています。

  • 尾日向梨沙

    1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーのケンさんと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年秋からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、ケンさんと愛猫の空(ソーラー) くんと力を合わせ、自分なりのソリューションを試行錯誤中。

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