Vol.10 Eバイクのスペシャルツアーに参加した1日

Text: Lisa Obinata Photo: Takanori Ota

梅雨真っ只中のある日。馴染みの焼きカレーの店ペンティクトンのオーナー木原孝さんから、こんなお誘いが届きました。

「魅惑の人妻野外倶楽部Eバイク&カヌーツアーに参加しませんか?」

なんというネーミングでしょうか(笑)。メンバーには、よく知るご近所の奥様方のお名前。孝さんは自転車好きで、休日には「ぶらタカシ」と銘打って、飯山近郊の魅力的なスポットをロードバイクで巡る様子をSNSにアップ、私もその投稿の密かなファンのひとりでした。もちろん即参加表明!

7月上旬の開催日、連日雨続きのなか、この日だけは曇り予報とお天気も味方してくれて、賑やかなツアーが始まりました。人妻とか熟女とか美魔女とか、いろんな呼び方で冗談を言い合う奥様連中が平日にも関わらず総勢8名! まずはカヌーのベース基地である戸狩のGYAROME BASEに集合し、マイクロバスで飯山駅へと移動します。

北陸新幹線飯山駅構内に併設されている「信越自然郷アクティビティセンター」でEバイクをレンタル。“Eバイク(E-bike)”とはスポーツバイクに電動アシスト機能を搭載した自転車のことで、坂道も長距離も気軽に漕げるということで近年人気を集めています。アクティビティセンターには、常時15台ものEバイクがスタンバイ。そのほか、マウンテンバイクや子供用ファットバイクなど多種多様の自転車のレンタルができ、飯山駅起点に魅力的なサイクリングプログラムが充実。使い方もスタッフが親切に教えてくれるので、初めてのEバイク体験にもオススメです。

このEバイクはフル充電されている状態で、約100kmも走るそう。ECO、NORMAL、HIGHの3種類のモードがあり、アシストパワーの強いHIGHを多用した場合や、上り坂が多い場合は、電力消費も高くなるとのことですが、この日予定されているルートであれば、途中で充電切れになるという心配もありません。レンタルヘルメットを装着し、全員準備が整ったところでいよいよスタート!

飯山駅から飯山伝統の仏壇店が多数軒を連ねる通称「仏壇通り」へ。平坦な道が続くので、Eバイクの電源をオフにしたり、ECOにしてみたり、走行感を確かめます。情緒ある仏壇通りを抜けると、徐々に自然豊かな景色へと移り変わって行きます。

孝さんアテンドのもと、車では通ることのない路地を通り抜けると、あたり一面田んぼの絶景ロードに出ました。たまに水たまりが出現する砂利道に気をつけて走行しつつ、360度田んぼに囲まれた一本道をひた走る気持ち良さに、熟女たちの歓声が響きます。普段、車で国道から眺めていても、惚れ惚れする田園風景のど真ん中に入れるとは、早速サイクリングの虜になりそう!

田んぼロードを越えると、この日一番の難所、鷹落山展望台(標高879m)へ向かう上り坂に入ります。HIGHモードに切り替え、ギアも軽くすると、急坂でもググッとアシストがきき、おしゃべりしながらでも漕げてしまう! もちろん、勝手に進むわけではないので、それなりに体力は使うけれども、立ち漕ぎを一切せずに上れるEバイク、最強です。

途中、今はなき信濃平スキー場跡を通ったり、豊かなブナ林を抜けたり、景色が見渡せるポイントで休憩したり。ひとりでは萎えそうだけれど、愉快な仲間たちと共に臨むヒルクライムに、電動アシストという力強い味方で、景色を楽しむ余裕すらあるのです。

峠道を越え、ラストスパートはテクニカルな細い未舗装路。雲が覆いかぶさってきたので、足早に目標の展望台に全員無事到着しました! 高度感満点のパラグライダージャンプ台から見下ろす飯山盆地はあまりに美しく、ずっと見ていたい景色ですが、霧雨が降ってきたので、お決まりの集合写真を撮って下ります。

下りはEバイクの電源をオフ。車も滅多に通らない山道でのスーパーロングダウンヒルは、高速カービングでスキーをしているかのような爽快感!! 上りはやや汗もかいたけれども、風を切りまくる下りの気持ち良さと言ったら。Eバイクに装着されている速度計を見ると、最高48kmまで出ていました(メンバー最高記録は時速52km!ただの熟女ではない)。

標高差800mを一気に下り、次なる目的地は北竜湖。小さな集落を抜け、線路を渡り、橋を越え、また上り坂です。しかし鷹落山と比べればなんのその。おしゃべりが多すぎて予定時刻をとっくに過ぎているけれども、北竜湖でのランチ&カヌーめがけて黙々と漕ぎます。

北竜湖とは、飯山市と野沢温泉村の境にある森に囲まれた美しい湖。到着すると、参加メンバーの旦那さまが全員分のお弁当を、また別の旦那さまがカヌーを用意して待っていました。なんて至れり尽くせりなツアーなんでしょう。お昼は民宿「トガリハイランド白樺」のBOXランチに、メンバーの畑の採れたてキュウリ。これを、湖面に張り出したデッキでいただくというスペシャルプランです。

絶品ランチを極上のロケーションで堪能したら、もうひとつのお楽しみ、カヌー体験! メンバーの旦那さまが主宰するガイドカンパニー「POWERDRIVE R117」サポートのもと、漕ぎ方のワンポイントアドバイスもいただきつつ、穏やかな北竜湖クルージングへ。

乗り物を換え、今度は下半身でなく上半身を使います。が、自転車の疲れもあって、誰もガツガツ漕ぐことはなく、ゆったり思いのままに。たまには漕ぐのをやめて、水の揺らぎを感じリラックス。これまた最高に気持ちいいのです。

もう少し北竜湖でのんびりしたいところですが、時間が押しまくっているために、飯山駅方面へと戻ります。中継地点は「道の駅 花の駅 千曲川Cafe 里わ」。甘いものに目がない美魔女たちのために、孝さん、スイーツ休憩のアテンドまで! 人妻の心を掴みつつ、自転車に不慣れな本妻にさりげなく寄り添う姿が素敵です。ソフトクリームでパワーチャージし、最後は飯笠山神社に立ち寄って、旅の無事を感謝し参拝。

行きとは全く違ったルートで、飯山駅にゴール! これが普通の自転車だったら完全にヘロヘロになっていることと思いますが、程よい疲れと大きな達成感に満たされた熟女たち。すっかりEバイクに魅了されてしまいました。

この日の走行距離は43km、充電はまだ半分以上残っています。Eバイクツアーを通して実感したのは、自転車だからこそ見える景色があり、新しい発見があり、入っていける道があるということ。上りも苦にならないEバイクという気楽さと、絶景を眺めながら風を切る爽快感はやみつきになりそうです。

夜はそれぞれの家族も合流して、戸狩の「Hunters Gate Lodge」にて打ち上げBBQ! 運動した身体に冷えたビールが染み渡りました。朝から晩まで、飯山の自然と熟女トークをフルに満喫した一日、企画してくれた孝さんと、たくさんの協力者に感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、実はEバイク、本ツアーで体験する前からずっと欲しかったのです。スポーツバイクには無頓着だけれど純粋に自転車に乗るのが好きな私。ただ、移住してからは周囲に急坂が多過ぎて、普通の自転車ではとても対応できないと思っていました。このEバイクツアーで、これは生活必需品だと確信し、ついに購入!

Eバイクには見えないスマートなフォルムがお気に入りの「CARTEL BIKES」というブランドです。このツアーの3日後に我が家にやってきたEバイク、嬉しくて思わず軽装のまま試乗。充電もこんなにシンプルなんです。

太陽光で発電した電力で、自転車移動という夢の暮らしが始まります。Eバイクのある日常、また改めてレポートします!

  • 尾日向梨沙

    1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーのケンさんと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年秋からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、ケンさんと愛猫の空(ソーラー) くんと力を合わせ、自分なりのソリューションを試行錯誤中。

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