Vol.2 豪雪地に太陽光発電という難題をいかにクリアできるか?

太陽光発電を検討するのにはぴったりの快晴の日。太陽の位置や建物の向きを確認する

太陽光発電をつけてみよう! 6月、家の前のアスパラ畑が全盛期を迎えた頃、太陽光発電に詳しい高嶋さんたちが、一度我が家に調査に来ることになりました。

モジュール(パネル)をどこに何枚くらいつけられるか、それによってどのくらい発電するのか、発電した電力だけで賄えるのか、などなど我が家に見合ったプランの相談が始まります。

そもそも日常で1日にどのくらいの電力を使っているのか、それすら把握していなかった私。電力会社からの請求明細を見てもらい、「ひと月200キロワットいかないくらいですね」と言われてもそれが多いのか、少ないのかもわからないくらい。。そして、最近の太陽光発電設置の動向や蓄電池のこと、未来の話を聞くことができ、まずそれが大きな収穫となりました。

まだ仮テーブルしかないリビングで最初の打ち合わせ

ひとつは、過去10年、住宅用の余剰電力買取制度(FIT)を利用して太陽光発電を導入した家庭が多く、その利点は「売電収入」だったけれど、買取期間が2019年から順次満了となり、今後は太陽光を設置しても経済的メリットが薄れるというお話。

もちろん、電気代が安くなったり、自家発電した電力を売ることができるというのは大きな魅力。でもそもそも、なぜ太陽光発電を検討するのかといえば、大きなリスクを抱える原子力発電や、二酸化炭素を排出する化石燃料に頼りたくない、ということ。

高嶋さんから、地球温暖化の現状や、2050年までに二酸化炭素の排出ゼロを目指す世界の道筋、そのために自然(太陽)と共存する新しい暮らし方が求められている、というお話を聞いて、そう、「電気代が安くなりますよ!」の謳い文句以上に、私はこういった考えのもと、再生可能エネルギーを導入したいのだと再認識しました。

「RE100という言葉わかりますか? 企業で使用する電力の100%を再生可能エネルギーにしようという世界的な取り組みで、アップルやグーグル、日本でも大手企業が多数加盟しています。これからは“我が家のRE100チャレンジ”を目指しませんか」

と、高嶋さん。そして100%太陽光発電だけで電力を賄うのには、蓄電池とのハイブリッドシステムが最適だということ。簡単にいえば、昼間に太陽光で発電した電力を蓄電して、夜は蓄電地にためた電力を使うことで、100%電力自給ができる。そしてもし停電しても数日間はオフグリッド* で過ごせるという、ワクワクするようなお話!

*オフグリッド:電力会社などの送電系統につながっていない電力システム、あるいは太陽光発電等で電力を自給自足している状態のこと。

すぐにでも取り付けたい!と気持ちが高まるものの、懸念事項はやはり雪。私が移住先に選んだ飯山市は、国指定の「特別豪雪地帯」に属する豪雪地なのです。

山々に囲まれ、田畑がどこまでも広がる美しい飯山盆地

長野県の最北部に位置する飯山市は、千曲川と飯山盆地を中心に360度山に囲まれた風光明媚な場所。移住先を決める時、春夏秋冬と季節ごとに足を運び、その都度、心揺らす風景があり、そこで暮らす人々と触れ合い、穏やかな農村の空気感にすっかり虜となってしまいました。母がひとりで暮らす東京の実家までは、北陸新幹線・飯山駅からわずか2時間という点も大きなポイント。

そして、市内には戸狩温泉、斑尾高原、お隣には野沢温泉、1時間前後で志賀高原、妙高高原、戸隠、湯沢エリアなど魅力的なスキー場が多数点在するところが、スキー好きな私にとっては何よりも魅力的だったのです。

冬は日本海からの季節風が関田山脈を越えて、雪の壁ができるほど雪が積もる

雪国に暮らしたい!と、選んだ場所なので雪が多いのは当然のこと。飯山市内でも場所によって積雪量の差は大きく、最深積雪平均は平地で1.5mほどですが、山間部ではさらに多く、2006年1月には観測史上最高4.5mの積雪量を記録しています。

モジュールメーカーの方も呼んで7月の打ち合わせ。バルコニーは手すりの工事中

できるだけ人里離れた山間部を選んだ私たちは、豪雪ももちろん覚悟の上。家は、南側が低くなっている斜面という土地条件を生かし、屋根を片流れ形状にし、屋根雪が南側に流れ落ちるような設計にしました。その屋根の上にモジュールを取り付ければ、積もった雪も流れ落ちるものと簡単に考えていたのが大間違い!

さまざまなデータによると、屋根の傾斜角が少し足りず、雪がモジュールの上に堆積してしまう可能性があるのだとか。モジュールの下に架台をつけて角度を足したらどうか、という案も出たけれども、それでも雪がうまく滑雪せずに溜まってしまったり、屋根に損傷を及ぼす可能性もあるのだそう。融雪装置を取り付けるには、その分の電力確保が必要で、本末転倒にも思える。

そもそも積雪2m以上の豪雪地は、太陽光モジュールの保証対象外なのだと言うのです。つまり、もしも雪の重みでモジュールや屋根が壊れても保証なし、ということ。なんだか思った以上に、大変なことにチャレンジしているようです。。

高嶋さんは、それでもなんとかしましょう!と頼もしく、あちこちのモジュールメーカーに良い方法はないか相談してくれましたが、やはりどこも豪雪地での太陽光発電には後ろ向きなのだそう。

それでは、屋根ではなく、薪小屋とかガレージとかを新たに増設し、その屋根にモジュールをつける?という提案も出るものの、結局最大積雪4mに備えるためには高さが必要で、ヤグラのようなものを建てる?? と、他の無駄なエネルギーが働いてしまいそうな話になってきました。

7月の終わり。家の前の畑は太陽の光をたっぷり受けて野菜がぐんぐん育つ

そんなこんなで時は過ぎてゆき、今年中に設置は難しいのかなぁと思いつつも、さんさんと降り注ぐ太陽を受けながら、諦めきれない気持ちで夏を過ごすのでした。

  • 尾日向梨沙

    1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年11月からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、自分なりのソリューションを試行錯誤中。

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