Text: Lisa Obinata Photo: Takanori Ota
太陽光生活を始めてから1年。システム設置当初は、今どのくらい発電してるかな〜と頻繁にモニターを見たり、1日の発電と消費のグラフをチェックしたりと気にかけていましたが、最近では慣れてほとんど確認することもなくなってしまいました。
けれども毎月届く電力会社からの支払い請求と、売電分の入金通知は密かな楽しみ。今月もこんなに安いのか! こんなに余剰電気を売電できたんだ!と、春から秋にかけての予想以上の発電量に大きな手応えを感じています。グリーンシーズンは消費電力も少ないので、かなりの割合で電力の自給自足が実現できたようです!
それでは、100%太陽光&蓄電池の力だけで過ごすことはできるのか?ということで、9月下旬、本企画のプロジェクトリーダーである高嶋さんの提案により、オフグリッド体験を試みることになりました。
「オフグリッド」とは、電力会社からの送電網につながっていない状態のこと。つまり「停電」状態をつくり、太陽光発電と蓄電された電力だけで生活するという実験です。
大型台風に見舞われ、夕方に停電が発生、2日後の朝まで電力が復旧しないという想定で行う防災訓練のようなもの。実験前には、高嶋さんからガイダンスを受けます。
日中は太陽が降り注げば発電してくれるので、太陽光だけで日常の電力は賄えそうですが、鬼門は夜です。夜間は、日中に太陽光で蓄電した電力から消費することになるので、使いすぎると過負荷となり、システムが落ちることもあるそうです。この現象を「オーバーロード」と言い、ブレーカーが落ちる時と同じような状態になります。
普段、使っている電気機器は、それぞれどのくらいの電力を消費しているのだろうか? あまり意識していませんでしたが、実験にあたり、日常で使う電気機器の確認と、何が何ワットくらい電力を消費しているのか知るところから始まりました。
たとえば、照明はLEDが省エネということはわかっていながらも、気に入った電球や色で選んだものもあり、ハロゲン球は200Wも消費するのに対し、LEDだと5Wと、思った以上に差があることを知りました。オフグリッド体験中は、できるだけ電力消費量の低いライトをつけようと思います。
また、冷蔵庫は開け閉めをしなければ意外と消費電力は低いということや、待機電力も少ないながらも電力消費しているので、コンセントを抜いた方がいいということなど。これらはオフグリッド中でなくても、省エネに向けて日頃から気をつけたいところです。
オフグリッド体験の初日、日中はお天気がよく、バッチリ発電していました。夜間に自動的にお湯をつくる設定になっているエコキュート(給湯機)は、消費電力が高いので、手動で「沸き増し」ボタンを押すことで、太陽が出ている時間帯にタンク内にお湯をためておくようにします。そうすると発電のない夜間の電力消費が抑えられるのです。
オーバーロードの可能性は低いけれども、念のため、キャンプなどで愛用しているポータブル式のソーラーライトも用意。ロウソクや懐中電灯、ランタンなども使えますね。
万が一、オーバーロードが起きた場合の復旧方法なども教わり、いよいよ停電に!
と言っても、目に見える変化はほとんどありません。停電を感知するとシステムは緊急停止し、1秒ほどで「自立運転モード」に切り替わります。モニターを見ると、いつもは数値が出ている「消費」と「売電」が非表示になっていました。オフグリッド時は、電気の供給量(太陽光発電+蓄電池からの放電)と消費量は常に同じ、「同時同量の原則」となるそうです。詳しくはこちらへ。
ここからは日常通りに過ごしてみます。夕方はソーラーくんとお散歩。ソーラーくん、犬のように散歩が大好きで、夕方になると散歩に行きたいとニャーニャー訴えてくるのです。いつものお散歩コースは、稲刈り直前の黄金色が美しく、ソーラーくんもトコトコとついてきます。
日も暮れて、発電はほぼしない時間帯に突入しましたが、蓄電池からの電力で、夕食の準備。電子レンジなど消費電力が高い家電はオーバーロードの可能性があるとのことですが、我が家は電子レンジがないので、調理中も心配なし。試しに家中の照明を全部つけてみても、全く問題なく、オフグリッドということも忘れてしまいそうです。
とは言え、いつ電力が復旧するかわからない非常時の想定なので、できるだけ電力はセーブしようと、食後の晩酌はすべての照明を消してロウソクの灯りで。これはこれで雰囲気あって良いものです。
高嶋さんの説明によると、我が家の日常の電力消費量を考えると、今晩、オーバーロードが起きることはおそらく無いでしょう、とのこと。
蓄電池100%、17時からの停電、夜間に大きな電力を使うこともないし、エコキュートも昼間の太陽光で沸き増し済み。なんともなく過ごせるだろうとタカをくくっていました。
ところが、、
この続きは、Vol.12 2泊3日のオフグリッド体験。太陽光の電力だけで過ごすとどうなる?【後編】へ。
尾日向梨沙
1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーのケンさんと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年秋からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、ケンさんと愛猫の空(ソーラー) くんと力を合わせ、自分なりのソリューションを試行錯誤中。Vol.1 海辺の町から山に移住。自給自足に近い暮らしを目指して
Vol.2 豪雪地に太陽光発電という難題をいかにクリアできるか?
Vol.5 一年で一番雪が降るシーズンを迎えて