Vol.18 【番外編】ソーラーくんが振り返る2022/2023シーズンの雪と太陽光発電

Text & photo: Lisa Obinata & Sora

雪国飯山ソーラー発電所開設の準備が始まった2020年6月。時を同じくして、我が家にやってきた生後1ヶ月の子猫の空(そら)。間もなく3歳を迎える空くんは、いつしか「ソーラーくん」との愛称をいただき、ソーラー発電所の監督として、日々、発電所や周辺の自然環境に異常がないかどうか見守っています。今回は、あまりに原稿を書くのが遅い私に代わり、ソーラーくんにこの冬のレポートを託してみました!

降る降る詐欺ニャ? いつまでもお散歩ができた12月

僕が住む飯山というところは、寒くなってくると、なんだか白いものが空からフワフワと降ってきて、山の上から順に白くなってくるんだ。僕は放し飼いだから、毎日外に遊びに行くんだけど、段々と家の周りも真っ白になると、ズボズボと埋まってしまって出かけるのも大変! パパとママとお散歩に行くのも大好きだから、真っ白になっちゃうとちょっと寂しいんだニャ。

でも、ニャン生3回目の冬の始まりは、「降らないね」「降らないね」ってみんな口を揃えて話してる。パパとママは、スキーって遊びが好きで、それは白くならないとできないみたいだから、早く降ってほしいみたい。

これは2022年12月10日の写真だよ。お散歩に出かける度に「もう雪が降っちゃうから、これでお散歩できるの最後だよ~」と、ママは言うんだけども、同じセリフを5回くらい聞いた気がするよ? 天気予報では降りそうだし、近くでは大雪警報が出ているのに、なぜかうちの周りは全然降らないみたいだ。「降る降る詐欺」って言うんだって。少し降っても、晴れて消えての繰り返し。いつまでもお散歩ができるから、僕としては最高だけどニャ!

うちからお山が見える野沢温泉スキー場も、いつもならとっくに真っ白なのに、雪が降らなくて、オープンが2週間以上も遅れてしまったんだ。人工降雪機という雪をつくる機械もあるのに、暖かすぎて雪がつくれなかったんだって。これが地球温暖化ってやつなのかニャ?

ホワイトクリスマス! クリスマスにやっとまとまった雪が降って、パパもママも嬉しそう。僕も久しぶりにフワフワ雪の感触を思い出したよ。12月26日は近くの戸狩温泉スキー場も無事オープンして、ふたりは毎朝のように、僕を置いてスキーに行ってしまうんだ。

12月31日。ポカポカでまた道路が出てきたニャ~! 一度白くなったら、もう何ヶ月も白いもの、と覚えた僕。こんなこともあるんだニャ? ママは薄着で大掃除していたよ。太陽ギラギラ、発電はバッチリ、僕もコタツで丸くならずに外遊び!

除雪をほとんどせずに身体に優しいハイシーズン

お正月は、一気にいっぱい降って、やっといつもの冬らしくなってきたよ。とはいえ、一晩に50センチ、80センチ、それが何日も続く、みたいないつもの豪快な降り方ではないので、パパとママも「毎日の除雪がなくて楽だ〜」ってさ。お正月明けくらいに、南面の下のパネルが埋まってきたくらい。(ここは屋根に積もった雪も全部落ちるから雪が溜まりやすい)

この頃はさすがに寒くて僕はほとんどお家のベッドや、ママのお膝の上で丸まっていたよ。でもトイレはお外でしているから、大雪の日も雪をかき分けて行くんだ。

1月7日、シーズン1回目のパネル掘り出し作業だったよ。僕も、パパがちゃんとソーラーパネルを出せるように監督、応援を頑張ったニャ。

昨シーズンは雪が多すぎて、下2枚のパネルの掘り出し作業を途中で諦めちゃったみたいだけど、今年は大丈夫!

ちなみに昨年の1月の発電量は301kwhだったけれども、今年は351kwh! 電気代の高騰にママはいつも嘆いているけど、その多くが太陽の力で賄うことができ、とっても助かっているみたいだ。僕は電気なしでも生活できるからあまり関係ニャいけどね。あ、でもご飯が自動で出てくるやつは、電気の力を借りているから、使えなくなったから困るニャ。

冬もみんなでお散歩。一番エコな遊び方

1月だというのに春みたいに暖かい日、パパのお友達が遊びにきて、みんなで裏山散歩に出かけたよ。スキー場には連れて行ってもらえないんだけど、おうちから出かける裏山散歩は、僕も一緒に行けるんだ。車も使わないからニャンてエコなんだ!

僕はいつでも自分の足しか使わないけどね。でもずっと雪の上を歩いていると肉球が冷たくなるから、たまにみんなの板の上で休憩するんだ。スキーで滑る時は、小さい時に買ってもらったリュックに、ぎゅうぎゅうに押し込められてママの背中に。ちょっと窮屈なんだけども、僕のお気に入りの場所、それにママはなんだかすごい嬉しそうだよ。

木登りとピーカンパウダーの日々

雪が増えてくると、僕の家にはたくさんの人が遊びにくるよ。この日は、屋根雪が落ちた山を使って、そり遊び。なんだか楽しそうな声が聞こえてきたから、僕も一緒に遊んだよ。僕は、柿の木に登るのが得意なんだ。葉っぱがない冬限定の楽しみ、木の上からの景色は最高なんだから! でも、あまり上まで登ると、降りるのが怖いんだニャ。

2月は、適度に雪が降っては晴れて、という日が多くてスキーを滑るにはとってもいいコンディションだったみたい。でも、晴れると日差しがものすごく強くて、あっという間に重い雪質に変えてしまう。ママたちは、朝一番に滑りに行って大体10時くらいには帰ってくるよ。

2月22日「猫の日」の写真だよ。このくらいの時期がシーズンで一番雪が多いのだけど、家の中から見ても大したことニャいね。去年のこの時期は、雪の山が2階のパネルまで達して、外の景色は全く見えず、バルコニーに雪がなだれ込んでいたなぁ。

2月も下旬になると、すっかり春のような陽気。雨が降ることもあって、ふわふわした雪は、ずっしり重かったり、冷えてカチカチになったり。

道路の雪も溶けてきて、僕が大好きな土の香りがするよ! その中にはネズミがいるんだ。ネズミが出てきそうな穴をこうやってチェックするんだ。

早すぎる春の訪れ

春分の日に近づくと、空気も変わり、ポカポカ陽気が続いて、ものすごい勢いで雪が溶けていくよ。ネズミが捕まえやすくなって、たまらニャい! 僕はネズミが大好物。家の中に連れて帰ると怒られちゃうから、ガレージでもぐもぐ食べるんだ。

この季節恒例、ママと「しみわたり」散歩に出かけたよ。日中に溶けた雪が夜間に冷えて固まり、そのまま晴れた朝にしか出来ないんだ。僕はいつも夜中に遊んで朝帰りなので、朝は眠いんだけども、なんだか楽しそうだからついて行ったんだ。雪がカチカチになって、本当にどこまでも歩いて行けちゃう!

雪解けとともに、山菜の季節がいつもよりずっと早くやってきたよ。美味しそうなふきのとうを探すパパのお手伝いをしてるところ。

3月26日。戸狩温泉スキー場の最終日は、もうほとんど雪がなくて、ギリギリなんとか滑れるようにしてあったんだって。3月は数日しか雪がほとんど降らなくて、高温に加え、雨や風でみるみる雪が溶けてしまって、スキー場の人たちは大変だったみたいだ。

3月の発電量はなんと596kWh! 昨年の3月は494kWhだからいかに太陽の出ている日が多かったのか、ということだね。雪の反射に、朝晩の気温差や風が強い時も発電量は上がるから、いろんな好条件が重なったみたいだ。3月は、杉花粉もものすごくてパネルがこんなに汚れてしまったのに、発電量には関係ないみたい。黄色くなったパネルも、雨が降れば流れて綺麗になるよ。

史上最速の桜の開花

長野市では3月28日に桜が開花、観測史上最も早い記録! 僕の家の周りも4月上旬には桜が咲き始めたよ。季節が2週間くらい早いねって、みんな言ってるけど、4月は急に寒くなったり、山の上で雪が降った日も何日かあって、寒暖差が激しい。この時期、僕は冬毛から夏毛に生え変わるんだけど、いっぱい毛が抜けたと思ったら、寒くなったりして、僕も体温調節が難しいニャ。

ゴールデンウィークでも、僕の家の周りの高い山はまだ白いんだけど、今年は雪解けが早くて、早めに閉めてしまうスキー場も多いみたいだ。それでもパパとママは、雪のあるところを探してまだスキーに行こうとしているから、よっぽど好きなんだね。

今シーズンを振り返ると、
*降雪量は少なめ
*太陽が出ると一気に気温が上がる(気がする)
*寒暖の差が激しい
*季節が2週間くらい早い

発電効率は良いシーズンだったけれども、そのうち雪が降らないのが当たり前になってくるとしたら寂しいね。気候変動で生態系が変わってネズミがいなくなったら困るな〜。僕も地球にやさしい生き方を全力で応援するニャ!

  • 尾日向梨沙

    1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーのケンさんと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年秋からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、ケンさんと愛猫の空(ソーラー) くんと力を合わせ、自分なりのソリューションを試行錯誤中。

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