Text & Photo: Lisa Obinata Photo: Takanori Ota
本サイトのオープンから1年が過ぎ、私たちの雪国生活も2回目の冬を迎えました。昨季は、雪ゼロからいきなりの豪雪の1週間でアタフタしましたが、今季は11月下旬から降っては溶けて、というスタートだったので、徐々に冬モードにシフトしていくことができました。
と思っていたのは束の間。12月下旬から続く寒波は強烈で、それから1ヵ月、警報級の大雪の日が何度あったでしょうか。家が雪に埋まってしまうんじゃないかと思うほど、連日ものすごい勢いで雪が降り続いていました。
この写真の通り、右のケンさんが立っている位置は地上から2mあたり。その少し上に1階のバルコニーと2枚の太陽光モジュールがあります。左の私が立っているのは地上からおよそ4m、2階のモジュールに手が届きそう! 屋根雪が全てこちら側に落ちるので、純粋な積雪量以上に嵩を増すのですが、1月中旬の時点で、昨年のマックスよりもすでに多いのです。低温が続き、融雪が進まないということも今季の特徴。近所のおばあも、こんな降り方は初めてだ、と言います。
下の2枚のモジュールも早々に埋まり、今季も2〜3日に一度は掘り起こし作業を行なっています。スキーして除雪して仕事して、という冬のルーティーンは昨年と同じなので、詳しくはこちら参照。
寒冷地仕様の愛猫、ソーラーくんは冬になると木登りが盛んになります(笑)。雪が積もった分、アプローチが短くなるのか、落葉して登りやすいのか、わかりませんが私たちが除雪作業をしていると、大体この柿の木に登って遊んでいます!
下の2枚のモジュールを掘り起こすか、放置して雪に埋めてしまうかで、発電量がどのくらい変わるかはわかりませんが、これだけ大雪の年でも全く発電しない日はゼロ、微量でも毎日発電するというのが、雪国飯山ソーラー発電所の誇るべき特徴です。写真は1日晴れていた1月8日、発電量を示す黄色を見ると朝から夕方まで、雪の反射や気温も伴って、雪のない季節以上に発電することもあるくらいなのです。
ただし冬の鬼門は、電気給湯器の「エコキュート」。上記写真の深夜の買電(赤ライン)はエコキュートの湯沸かしによる電力。大気の熱を利用してお湯を沸かすエコキュートは、外気温が低い冬場は、多くの電力を消費します。
電気代や原油価格の高騰を受け、寒冷地でのエネルギー確保は、ますます難題となっているように感じます。
我が家は太陽光に救われている面もありつつ、発電量の少ない冬場は、太陽光で日常の電力を賄うことは現状のシステムでは難しいので、多くのエネルギーを要する暖房器具の選択も工夫が必要だと思っています。
化石燃料を使わないという観点で考えると、やっぱり薪ストーブは偉大です。我が家の冬の暖房器具のメインは、長野県産の薪ストーブ。薪を作ったり、火加減の調節をしたり、手間はかかりますが、この一台で家中を暖めてくれる無くてはならない存在です。
火を囲って暖を取るのはもちろん、薪ストーブの周りには、スキーや除雪後の濡れたものを干したり、薪ストーブの上でお湯を沸かしたり、煮物を作ったり。一台で何役も活躍! 揺らぐ炎を眺めるというのも至福の時間ですね。
薪の調達と管理はケンさんの担当。移住初年度から薪を作り始めましたが、一冬過ごすのには結構な量が必要で、一部は購入して補います。今年は寒さが厳しく、薪の消費も早いのですが、購入したナラの薪は火持ちがよく重宝しています。
こちらはご近所の桜の樹が枯れてしまい、切ってほしいとのことで、秋に伐採し薪用にいただいてきました。少しずつご近所にも知り合いが増え、こうして薪になる間伐材や剪定枝をあちこちから集め、冬の我が家のエネルギー源として活用させてもらっています。
薪割り機を持っていないので、これだけの原木を斧で割るという果てしない作業! 私は薪割りが下手すぎて戦力外なので、ひとりでひたすら薪割りをしてくれるケンさんに感謝です。
もうひとつの暖房器具は、アラジンの石油ストーブ。ビルトインガレージに吹き抜け、土間、大きな窓という仕切りのないリビングは、さすがに薪ストーブだけでは暖めきれない時もあり、寒い日はアラジンと併用しています。ケンさんが引っ越しの時に持ってきたアラジンは、クラシックなデザインで、コンセントからの送電も不要なので置く場所を選ばず便利。ただし灯油の消費量は結構なもので、CO2削減を考えると、化石燃料である石油ストーブの多用は考えものです。
薪ストーブのおかげで、2階は自動的に暖まる構造なのですが、北側に位置する私の書斎は、時間帯によってはひんやり。サブ的にオイルヒーターを使用しています。これが唯一、我が家で電気を使う暖房器具。冬でも太陽が出ている日は、太陽光の電気で暖めてくれると思うと、気持ちよく使えますね。
厳冬期は、マイナス気温になることも当たり前の飯山ですが、暖房器具よりも何よりも、パワーを発揮しているのが、特注の木製サッシによる断熱効果です。これは家を建てる時に、素人ながら学び、こだわった部分です。
室内にいても、外の自然を存分に感じられるようにと、リビングの壁2面に大きな窓を組み込みましたが、その分、冷気が流失しては意味がない。できるだけ自然素材を使って家を建てようというコンセプトに沿って選んだ木製サッシは、機能面でも非常に優れていることを知りました。
長野県産の木材を使って、県内で製作する木製サッシメーカーを見つけ、オーダーしました。この木製サッシは、建具職人の匠の技とドイツ製加工機で生み出され、国内最高水準の高気密、高水密、高断熱を誇ります。たとえば極寒の日、暖房器具をつけずに、半日外出して帰ってきても、出かける前の室温をキープしていたのかと思うくらい暖かいことがあります。
移住前は、湘南の古民家に暮らしており、湘南とはいえ、真冬は室内が凍えるほど寒く、朝起きると室温3度!というようなこともありました。現在の住まいは、何時間か暖房器具をつけなくても10度を下回ることは滅多にありません。
初期投資はかかるけれども、長い目で見たら暖房器具よりもいかに家の断熱性能を高めるかを重視した方が、結果的に省エネにも繋がるのだと実感しています。
最後に我が家の特別暖房! 猫たんぽ(笑)。雪が好きで、冬も外遊びによく出かけますが、たまにこうして膝の上に飛び乗ってきてそのまま眠ります。これが何よりも暖かいのです。
他にも、身体を冷やす食材をできるだけ摂らないようにしたり、毎日身体を動かしたり、じっくり入浴したりと、身体そのものを温めることも意識しています。わざわざ温暖な地から極寒地に移住してきたわけだけれども、雪に囲まれた暮らしは、住空間の作り方と心の持ちようで、意外とあたたかいのですよ!
尾日向梨沙
1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーのケンさんと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年秋からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、ケンさんと愛猫の空(ソーラー) くんと力を合わせ、自分なりのソリューションを試行錯誤中。Vol.21 4年目突入の太陽光生活と、深刻な雪不足に悩まされる2024年幕開け
Vol.11 野沢温泉でマウンテンバイク。秋の里山を駆け抜けて
Vol.3 積雪4mにも対応する突破口を見つけて、ついに太陽光発電システムの設置へ