Text: Lisa Obinata Photo: Takanori Ota
飯山の夏。信州とはいえ、盆地である飯山市はなかなかの暑さです。日中、照り付ける日差しは強烈で、30度を超すことも日常。今年は空梅雨だったり、6月に気温36度(飯山市の6月の気温としては史上最高)を記録したり、ゲリラ豪雨や雷が多発したりと、この季節も気象変動を身近に感じます。
とはいえ、朝晩は涼しく快適で、日中のデスクワークも窓を開け放てば、エアコンなしで全く問題ありません。たまに東京に出張へ行くと、エアコンの室外機の排熱や、コンクリートやビルの照り返しによるモワッとした暑さと、室内に入った途端にキンキンに冷やされている温度差に身体がついていけないことがあります。
いかに緑地や水面が、熱を吸収し、風の道を作ってくれているのかと、飯山に帰るたびに、その恩恵に気付かされます。
真夏の農作業は暑すぎるので朝か夕方限定。今年は、天候の影響もあるかもしれないけれど、近所の農家さんがモリモリ収穫しているなか、我が家の野菜たちは成長が遅め。よく言えば、自然農にチャレンジしているから出来過ぎない、正直に言えば、放ったらかしすぎ、ということなのかも。。
夏は草刈りの季節でもあります。移住前から草刈りに手慣れているケンさん、いたちごっこのように、草刈りしてもすぐに伸びてくる雑草と日々格闘。でも、雑草だって生き物。野菜の生育に影響のない部分は刈り過ぎないように。雑草が生えていると、朝露や少しの雨でも土は乾きにくく、水やり不要という利点もあります。
今年はほとんどの野菜を、昨年自家採種した種や、購入した固定種から育てています。トマトや紫蘇は、自生(種がこぼれて発芽)した子たちがたくさん! 8月上旬ともなれば、例年トマトはわんさか穫れる時期だけど、今年はなかなか赤くなりません。それでも、ご近所からお裾分け野菜にも恵まれ、野菜を買う必要はほぼ無し!
さて、季節の報告が長くなりましたが、ここから今回の本題。Eバイク(電動アシストスポーツバイク)のお話です。
昨年の夏に、マイEバイクを手にしましたが(Vol.10巻末参照)、実はそのもっとずっと前に、クラウドファンディングで販売されていたEバイクを注文していました。
それがこちら、ワイルドな外見が特徴的な「MATE BIKE」。極太のタイヤでちょっとしたオフロードも走れ、折り畳みも可能というデンマーク発のEバイクなのです。2020年の夏には注文していたのですが、到着が遅れに遅れ、その間に痺れを切らしてもう一台の「CARTEL BIKES」を購入。2021年秋にようやくMATEが届き、Eバイク生活もふたりで楽しめるようになったのです。上の写真は充電中の様子。
フレーム中央のロックを外し、パタンと倒すと折り畳むことができ、バッテリーの取り出しも可能。ただし、なかなか重量のあるEバイクなので、こちらはケンさん専用に。
田舎暮らしだと圧倒的に車移動がメインとなります。Eバイクが届くまでは、朝のゴミ捨てすら軽トラで行っていました(歩くと片道10分)。周囲には坂も多いので、普通の自転車では出かけるのも億劫になりますが、Eバイクなら上り坂もスイスイ。車で10分圏内くらいは自転車で行く、という選択にシフトしました。もちろん、充電は太陽光で。CO2排出ゼロの移動手段です!
この日は、隣村で暮らすお友達の家に遊びに行くことに。片道14km、サイクリングには程よい距離感です。曇りのち雨と微妙な天気予報でしたが、太陽が出ていると暑すぎるのでむしろちょうどいい、ということでソーラーくんに見送られながら出発!
家の裏のズッキーニ畑のお母さんと世間話をしていると、ソーラーくんが付いてきてしまいました(笑)。いつもの散歩道だから仕方ないけど、ソーラーくん、今日はお留守番頼むね。
こんな坂道だって、電動アシストモードでおしゃべりしながら上れてしまうのがEバイクのすごいところ。私の乗っているCARTEL BIKESのeboは、LOW、MIDDLE、HIGHと3段階のアシストモードがあり、急坂ではHIGHのボタンを押すと、ググッと強いアシストがかかります。MATE BIKEのmate Xは、1〜5の5段階で、サイクルコンピューターも標準装備。どちらもアシストモードの選択によって、フル充電での走行可能距離は変わるけれど、大体60〜80kmくらいは余裕で走れてしまうのです。
田んぼの稲が伸び、一面青々とした田園風景を疾走! 緑の匂いや風をダイレクトに感じられることもサイクリングの醍醐味です。
砂利道は、タイヤの太いmate Xが威力を発揮します。私が恐る恐る走る水たまりも凸凹も、ケンさんは余裕で進んで行きます。逆に、この後に続く長い長い下り坂は、ホイールが大きいeboが有利。アシスト機能はオフ、ギアを上げ、一気に加速してダウンヒルを楽しみました。
目的地は赤い橋の向こう。上り坂はほとんど無さそうだし、普段車では通ったことのない道ばかりでとても新鮮です。
フラットな道ではできるだけアシストは使わずに、日頃の運動不足を解消。電動ママチャリとは違って、バッテリーはフレームに内蔵されスポーツバイク仕様なので、電力を使わなくても平坦な道なら軽快に加速していきます。
風光明媚な原風景を眺めながらのサイクリングは、移動手段という目的以上に、気持ちのいいもの。それぞれ20万くらいする高価な買い物だったけれども(数年前まではもっと高価でした)、太陽光で充電し、車を使わないで移動でき、サイクリングも楽しめて、とっても価値のある買い物をしたと思います! 都会とは違い、車移動が当たり前の田舎こそ、Eバイクが普及すれば良い循環が作れそうですね。
この続きは、Vol.16 Eバイクでオフグリッド生活の家族に会いにいく 【後編】へ。
尾日向梨沙
1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーのケンさんと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年秋からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、ケンさんと愛猫の空(ソーラー) くんと力を合わせ、自分なりのソリューションを試行錯誤中。Vol.21 4年目突入の太陽光生活と、深刻な雪不足に悩まされる2024年幕開け
Vol.11 野沢温泉でマウンテンバイク。秋の里山を駆け抜けて
Vol.3 積雪4mにも対応する突破口を見つけて、ついに太陽光発電システムの設置へ