Vol.16 Eバイクでオフグリッド生活の家族に会いにいく 【後編】

Text: Lisa Obinata Photo: Takanori Ota

Vol.16 Eバイクでオフグリッド生活の家族に会いにいく 【前編】からの続きです。

Eバイクの魅力を再認識しながら約1時間でお友達の家に到着!

青山ゆうひ&ゆかちゃんファミリーが総出で出迎えてくれました。いつか訪れてみたいと思っていたお宅。なぜかというと、なんと完全オフグリッドライフを実践しているのです。電気、ガス、水道(下水を除く)すべて契約なし!

軒下には収穫したライ麦が干してありました。パンを作るときに使うのだそう。お米はもちろんのこと、畑では約150種類もの野菜と果実を育て、家族4人の一年の食事を賄っています。農家さんではないので出荷などはせず、完全に自分たちが生きていくための食糧の自給です。

電力は自作の太陽光発電で、ソーラーパネルはわずか1枚。冷蔵庫も洗濯機も、家電製品は一切ないので、電力はほとんど使わないとのこと。太陽光で発電した電力はバッテリーにチャージし、室内にわずか5つのLED電球をともすのと、充電式電池の充電に使っていました。2階の部屋や浴室には電気がないので、夜は早く就寝し、必要な時はヘッドライトで過ごすのだそうです!

築40年の家を部分的にリノベーションして暮らしている青山家。特に大きく改装したのはこのキッチン。もともとあったシステムキッチンを取り外し、カマドと、木桶を活用した水場を設置。なんと水は、裏山に自家水源を保有していて、そこからの湧き水を自宅に引いているのだそう。常に流れている水なので、蛇口の水は1年中流しっぱなし。なんて豊かな環境なのでしょう。その水の清らかで美味しいこと!

ゆかちゃんと、ゆうひくんがふたりで作ったという料理をお昼に振舞ってくれました。動物性食品を一切摂らない青山家では、材料はすべて畑で育てた野菜や穀物。味噌やお酢も手作りなのはもちろんのこと、塩まで海水から手作り! ゆうひくんが裏の山を整備して間伐した木材を焚き木に、火を起こします。ちなみにお風呂も薪ボイラーで温めているそう。

ビーツと紫芋のチヂミに、ズッキーニの中華炒め、きゅうりの冷や汁、竈焚きピーナッツ入り玄米ごはん。どれも素材の味がしっかりと、そして優しく、滋味深い味わいに感動!!

ふたりが種から手塩にかけて育てた野菜とお米。山のお水と、山の木をエネルギー源に熱を加え、手作りの陶器の器に盛られ。ふたりの数々の手仕事による温かさが、お料理を伝ってじんわりと届くような感覚でした。

冷蔵庫がないので、食べ切れる分をその都度作ったり、ご飯は一度に大量に炊いたり、畑が雪に覆われる冬は根菜や穀類を生かしたり、保存食を作ったりと、暮らしの工夫もたくさん。

2階のお部屋を案内してもらうと、そこにはお手製のボルダリングウォール! 知り合いからホールドを譲り受けゆうひくんが作ったのだそうです。長男あるくんのご自慢の遊び場です。

昨年11月に生まれたここくん。ゆかちゃん、自宅の浴槽でお産しました。ふたりとも、この家での自然分娩で、家族に囲まれて、ゆったりと健やかに育っています。4人が身に纏う洋服も、ゆかちゃんの愛情が注がれた天然素材の手作りなのです。

元々は、一般的な住宅に住み、ジャンクフードも食べていたというふたり。原発をやめたいから電気を自作してみようとか、山小屋で働いていた時に洗濯機がなくて手洗いが楽しいと思えたとか、ちょっとしたキッカケで、少しずつシフト&チャレンジし、それが面白くて、オフグリッド生活にたどり着いたと言います。

決してストイックな様子はなく、電気やガスのない生活をみんなで工夫して、心から楽しんでいる姿は、便利な生活になって失われた大切なものがたくさん詰まっているような印象を受けました。

私からしたら憧れの暮らしだけれども、自分たちに置き換えてみると、冷えたビールを飲みたいし、お肉や魚も好きだし、洗濯物の手洗いも自信ないし、ここまで徹底するのはハードルが高い。けれども、信州に移住したキッカケに、畑を始めたり、太陽光発電を取り入れたり、いくつかの家電を手放したりと、多少なりとも生活をシフトしました。

それから3年が経ち、こうした素敵な出会いからの刺激と学びがたくさんあり、またひとつ、自分たちの身の丈に合った新たな選択ができたらいいなと思っています。車移動を減らし、Eバイクを使うこともそのひとつ。地球温暖化防止のために、とか、環境保全で、ということではなくて、青山ファミリーのように、無理はせず、我慢もせず、楽しみながらサスティナブルな暮らしを実践していきたいですね。

  • 尾日向梨沙

    1980年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、13年間、スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同雑誌の編集長を務める。2015年、フリーランスとなりスノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を写真家・渡辺洋一と共に創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に、湘南から長野県飯山市に移住し、パートナーのケンさんと共にハーフビルドでマイホームを建築。雪国でスキーを取り込んだライフスタイルを実践しつつ、同時に畑での野菜作りを行うなど、自然に寄り添った暮らしを目指す。2020年秋からは、太陽光発電&蓄電システムを取り入れ、できる限り電気を自給自足するこころみもスタート。長年スノースポーツに携わる中で実感してきた地球温暖化について向き合い、ケンさんと愛猫の空(ソーラー) くんと力を合わせ、自分なりのソリューションを試行錯誤中。

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